デッサンの描き方の基本を練習するために人の手を描く
●デッサンの基礎の基礎はシンプルな形から
人物デッサンを始める前に、シンプルな形の物を描く練習から始めてみましょう。
学校の美術室や絵画の教室であればデッサン用の石膏像などがあると思いますが、その中に立方体や球体などの幾何形体の石膏モデルはありませんか?
シンプル過ぎて戸惑ってしまうかもしれませんが、真っ白な石膏の球体や立方体は陰影が見えやすく、どの部分を明るく、濃く描けば立体感を表現できるか理解することに役立ちます。
球体を描くにはきれいな円を描く必要がありますし、立方体はデッサンが狂ってしまうと歪んで見えます。正確に輪郭線を捉えて正しい形が描けるように練習しましょう。
家で練習する場合は、ティッシュペーパーの箱などを描くといいですね。
●自分の手ならじっくり観察してデッサンができる
全体の形を捉えたり、陰影を付けることに慣れてきたら自分の手をデッサンしてみましょう。
利き手の反対の手ならいつでも描けますし、角度やポーズを変えていろいろなバリエーションで描き方を練習することができます。
人間のデッサンの描き方、写真やデッサン人形を使って
デッサンはじっくり観察しながら時間を描けて丁寧に描いていきますが、人体のバランスやポーズを捉える力を養うにはクロッキーも効果的な方法です。
1枚当たり数十秒から数分程度の制限時間を決めて、次々に違うポーズを描いていきます。繰り返すうちに短い時間で特徴を捉える目が養われ、デッサンの基礎力が付きます。
●デッサン用のモデル人形を使う
実際にモデルになる人物がいる場合は、一定時間ごとにポーズを変えてクロッキーを行います。モデルがいない場合には、デッサン用のモデル人形を使うと便利です。
木製や樹脂製の人形は人体と同じように関節が曲がるようになっているので、自由にポーズを変えることができます。ジャンプのような空中姿勢も再現できるので、自由にポーズを変えてクロッキーの練習ができます。
●写真やネットの画像を参考にする
デッサンは目の前にある立体の実物をデッサンすることが一番望ましいのですが、手軽に練習したいのであれば友人にポーズをとってもらい撮影した写真や画像をもとにして練習する描き方もあります。
本やインターネットで画像を探し、見ながら描くこともデッサン力アップの助けになります。
人間のデッサンはバランスが大切
人物をデッサンする場合には、様々なバランスを正確に把握することが大切です。
全身をデッサンするのであれば、まず重要になるのが頭の大きさと身長とのバランスです。
頭の大きさ(縦の長さ)を1として、身長全体が6となるバランスを「6頭身」と表現します。
プロのモデルや女優に対して「8頭身美人」という表現を聞いたことはないでしょうか。8頭身になると顔が小さく、体はとてもスラリとして見えます。
ですが、一般的な人物を描くのであれば6頭身から描き始めてみましょう。
●頭の大きさを基準で考える
身長は頭が6個分でしたが、肩幅はどうでしょう。頭の横幅を1とした時に、男性の肩幅は2で考えます。女性の場合は平均して肩幅が狭くなるので、少し狭く1.7~1.8ほどにしましょう。
●各関節の位置は全身のバランスの中で把握する
正面を向いた人物の全身像を描いてみてください。身長の半分ほどのところに股間(足の付け根)を意識しましょう。
膝は股間と足先の中間あたりになるとバランスが良く、ひじは脇と股間の中間になるようにします。
デッサンの描き方は鉛筆の持ち方によっても変化が出る
本格的なデッサンでは木炭を使いますが、鉛筆を使ってデッサンをする場合、鉛筆の持ち方でも描かれたデッサンの線や塗り表現に違いが生まれます。
字を書くときのような普通の「鉛筆持ち」をすることもありますが、デッサンでは鉛筆の先を使って強く描いてしまうと消しにくくなってしまうので「順手持ち」と「受け手持ち」のどちらかで描くことが多くなります。
●受け手持ち
人差し指に乗せた鉛筆に親指を軽く添えて持ち、手のひらが見えるように持ちます。薄く色を置くときの持ち方で、ひじを使って大きく動かせば広い面を塗ることができます。
●順手持ち
受け手持ちと同じく手のひらが見えるよう、親指が上に来る持ち方です。受け手持ちよりも力が入れやすいので、大きな面に濃く色を乗せる場合の持ち方です。
芯が柔らかめの鉛筆を使い、力を入れ過ぎずに「紙に鉛筆の色を置いていく」ように描くことがコツです。
デッサンの練習は見る力も養う
いろいろな絵を早く描きたい、早く上達したいと思ってデッサンを始めたら、描くモチーフは単純ったり地味だったりと、面白くないと感じることがあると思います。
しかし、デッサンは絵を描くことそのものの技術だけではなく「描く対象をしっかりと観察する目を養う」ということも重要な目的なのです。
デッサンの練習を積み重ねていくと、基礎的なデッサン力とともに全体のバランスや陰影、質感や色合いといった情報を対象となるものから読み取れる「目」を持つことができるのです。
自分は写実的な絵ではなく抽象的な絵が描きたいからデッサンなどしなくてもいいと感じてデッサンを疎かにする人がいますが、それは間違いです。
どんな絵を描くにしろ、デッサン力という基礎力がある人が描く絵には説得力が生まれます。空想・幻想の世界を描いても本当にそこに存在しているような絵が描けるか、薄っぺらな絵になるかはデッサン力が大きく関係するのです。
そしてよく観察するということは、様々なデザインやモチーフの情報をインプットすることにもなりますので、感性を磨くことにもなります。
デッサンは絵を書くことだけでなく観察することにも大きな目的があるとおわかりいただけたでしょうか。
地道なデッサン練習は、すぐには違いを感じられなくても必ず絵の上達に繋がるものです。コツコツと積み重ねる基礎練習は、必ず後から「やっておいてよかった」と思えますよ。